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そうして君に落ちるまで

第5章 いつもの(神田)









「あいたっ」


前方不注意。

と言うよりかは、向こうが避けると思っていたと言ってもいい。


しかし前方から来たそいつは避けることはなく、声を残して視界から消える。ドサリといった音を聞いて、こんな事なら自分が良ければ良かったと舌打ちをした。








流石にぶつかってぶっ倒れた奴をほっぽていくのは気が進まなくて、仕方なく肩に米俵のように担ぐ。


…熱いな…


熱でもあるのだろうか。
だったらこんなふらふら歩いてんなよ…


何度目かわからない舌打ちをすると、担いだ身体がビクッと動く。



「えっ…うっ…」

「おい、吐くなよ?」

「…おろして…」

「また倒れられると面倒だからこのまま医務室へ連れて行く。」

「いや、あの…あ…?」



背の方から聞こえていた声がピタリと止まる。

まさか本当に吐かれないだろうなと、慌てて床に座らせるように下ろすと、うっと一言。


「いたっ雑…」

「あ?」

「いえ、ありがとう…」


カチリとあった目は瞬いたかと思えばふいっと逸らされる。どこかで見た事あるようだが思い出せない。ここにはあまりいない東洋人のようで、だからこそ端に引っかかってはいるのだろうけれど、それだけだった。


「顔、近いです。」

「……俺はもう行くぞ。」


意識が戻ったのなら1人で戻れるだろう。また倒れても、他の奴がどうにかするはずだ。

ただでさえ良い気分ではないのにこれ以上他人の面倒を見る気はない。


「あ、うん。あの…」

「あ?」

「あ……蕎麦…今日も食べたの?」

「テメェには関係ねぇだろ。」

「…まぁいいか。ありがとう。えーっと…か…」

「…神田だ。」


どうして自分が毎日蕎麦を食べている事を知っていて名前が知られていないのか。疑問には思ったがエクソシストである身柄、好奇の目には慣れていた。どんな奴がどんな風に自分を見ているか、興味はない。


何度目かわからない舌打ちをして背を向けると、「運んでくれてありがとー」と後ろから声が聞こえたが、返事はしなかった。









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