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そうして君に落ちるまで

第5章 いつもの(神田)











「お蕎麦、どぉ?」

「別に。食える。」

「んもー!つれない!」


またねと厨房へ引っ込む料理長のいたカウンターへ背を向け、空いている席へと足を進める。



蕎麦の配置と味が変わってから3日目。
最早それがデフォルトとなりかけていた。




でも


少し、何か少し物足りない気がしてもやもやとする。

が、もちろん、そんなのは自分にとって大したことではなくて、慣れれば同じだ。



「お、ユウまた蕎麦?飽きねぇな〜」

「うるせぇ斬るぞ。」

「えっなに?機嫌悪っ」


おっかね〜と言いながらも向かいに腰を下ろすそいつはまじまじとこちらを伺って。

「ありゃーまだ沙優治ってないんさ。だいぶこじらせてんな。」

「は?」

「いや、その蕎麦作ってる子。風邪引いてんだけどさ、ほら、こないだアレンが抱えてた奴。」

「んなもん覚えてねぇよ。」


一目見てそいつが作ってるものではないと言い当てたのは、ブックマンのこいつなら普通か、と特に引っかかりはしなかったが、その蕎麦を作っている奴のことは覚えていなかった。

そもそもあの似非紳士の事を思い出そうとすると、イラっとした記憶しかなくて、ましてそいつの抱えていた人間などいたかいないかすら薄かった。

…というかいつの話だ?



どちらにせよ、自分には大して意味の無いことだと結論付け、蕎麦をすする。





「機嫌悪いの、蕎麦の味のせい?やっぱ違う?」

「あ?」



興味津々といった具合に聞いてくるそいつに、思わず眉がピクッと反応する。

自分でも気の長い方だとは思わないがさすがにそれはない。第一、違和感はあれど今食べているものもまずいわけではないのだ。








いつもの通り、空になったお盆を下げると、なにやら声をかけている兎は無視して鍛錬場へと足を進めた。








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