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そうして君に落ちるまで

第2章 ifの願い(コムイ)●










「やぁ、オメデトウゴザイマス♡」

自我が芽生えたのはいつだったか、今ではもう覚えていない。

目を瞬く私にニコリと笑う伯爵様を見たのが始めだったことはよく覚えている。



あれから、この街に来て、自分の店を持った。
殺人衝動は仕方ない。任務は面倒だったけどイヤではなかったし、ストレス発散にもなる。

合間の時間に自分の好きな小物を集め、売り、ついでに良さげな食料を探したり、条件の良さそうな人間を伯爵様へ教える。

なかなかのスローライフが崩れたのは彼が来てからだった。

彼に会ってからも殺人への違和感はなかった。
だってこればっかはしかたないじゃん?
けれどよりによって教団のお偉いさんだったとは…


いつか、彼を殺してしまうのではないかと、不安で仕方なかった。

彼はきっと、殺した時の快感も最高だろう。

それだけならよかった。
それだけでいたかった。

しかし、それよりも、彼の側にいたいと、惹かれる気持ちの方が殺意を上回り、喉が乾く。





「これ、手紙書いたんだ。さりげなく渡しといてもらっても良いかな?」

醜い姿のまま思い出した手紙を差し出したが、アレンと名乗った白髪の少年は嫌な顔1つせずにそれを受け取ってくれた。


「ありがとう。」


黙っていてくれて。
彼の前で、ただの人間で居させてくれて。


少年は大切そうに手紙をしまうと、再び手を構える。
さぁ、楽になろう、少年の手が振り上げられたところで、ドアが勢いよく開いた。

ああ、タイミングが悪いな。



「沙優…!!」

「アレンくん!!!」


一瞬、手の動きを止めそうになった少年の名を叫べば、そのまま腕は振り下ろされた。





「…手紙、無駄になっちゃったな。」














自分が使徒だったらと彼は言った。







ああ、そうだね。








あなたが使徒だったら、








あなたに殺してもらえたのに。























「さよなら。」










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