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そうして君に落ちるまで

第2章 ifの願い(コムイ)●










「近くに感じます。レベル2か3辺り。」

店に行く道すがら、アレンくんの一言に背筋のゾワッと悪寒が走る。

ラビに声をかけてもらわなかったら…
いや、というかもしかしたら既に…

最悪の想像をして首を横に振る。
気がつけば走っていたが、2人は何も言わずについてきてくれた。

「沙優…!」

勢いおく開けたドアのおとに驚いた彼女がこちらを見やる。

「よかった…」

「…いらっしゃい。」

彼女は何事かと首をかしげながらも嬉しそうにこちらへ寄ってくれた。

「…もう来てくれないかと思った。」

「…ごめんね。」

「沙優、久しぶり。」

「ラビくんも、いらっしゃい。?今日は3人なのかな?」

「あ……アレン、ウォーカーと言います…」

不意に声をかけられたアレンくんは動揺したのか、言葉をつっかえたが、彼女はそれを見て、いつものように優しくふわりと笑った。


「コムイさん、本当に良かった。私ね、引っ越すことになったんです。」

「えっ」

「親の都合でね、明日にでも遠くに、実家に帰らなくちゃいけなくって、だから、その、本当よかった…」


さらりと、淡々とした彼女の声がじわじわと震えていく。突然のことに世界が静止したかと思った。

言葉が出てこない。



会えなくなる。
手の届かないところに行ってしまう。

AKUMAに蝕まれるこの世界で、遠くへ行く彼女が殺されない可能性は高くはないはずだ。


「……沢山、沢山話をしたいけど、明日の支度、しなくちゃいけなくて。だからコレだけ。」

彼女はレジのところへ行くと、引き出しから何かを取り出し、こちらへ戻ってくる。

その手に握られていたのは自分が買ったペンのインクだった。

「こんなものしか渡せないけど。これ持ってって。」

「…ありがとう。」

「じゃあ、お店閉めるから、ゴメンね。」

柔らかく背中を押され、ドアへと向かう。
本当に時間が無いのか、別れを辛いと思っていてくれてるのか、自分では判断ができなかった。

ここで帰って良いのか?

何も言わず、想いも伝えず

このまま


口を開けど、空気を揺らすことはなくドアが目の前でゆっくりと閉じていく。

「ありがとう」

微かに聞こえたそれは胸を締め付けるだけだった。





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