第1章 雨の日のモノローグ
ざあざあと降りしきる雨のなか。
傘をもった女性は物憂げに空を見上げた。手には傘に入りきれていないバッグを提げてはぁ、とため息をこぼす。
『…梅雨明け宣言したのにまた雨が降るなんて。』
聞いてないよ、とぼやく彼女は片手に傘を持ちながら何やら教科書らしきものをビニールにくるんで抱えている。どうやら濡れてしまったらしい。
しとしとと濡れた道路を歩いて家路をたどり、アパートの階段を登った時。目眩のようにくらりとした気分に襲われた彼女の脚がずるりと滑る。
________彼女の視点が反転した。
階段にスリップしてしまったと彼女が気づいたときには彼女の体は落ちていた。
空を掴む手も虚しく、物凄い衝撃が彼女の体を襲う。かは、と身体中の空気は彼女の意思に反して吐き出された。ぼんやりと滲んでいく意識とぐんにゃりとして見える景色は段々と消えていく。
彼女の消え行く意識の端で、何かが淡く光って消えていった。