第3章 オヒメサマ
髪をシーツの上に散りばめた私は、まだ覚醒しきっていない頭で、彼を見つめた。そしてシーツを手繰り寄せて、また微睡の中へと落ちていく。
『帰ったら面白いものを見せてやろう』
そういうと、彼は静かに立ち上がった。閉じた視界ではわからないけれど、気配でなんとなくわかるそれに、私は鈍っていく思考の中、小さく呟いた。
『いってらっしゃいませ、スフィアさま・・・』
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どれぐらい時間が経っただろうか。
気が付けば室内を赤く照らしていた夕日は既に沈み、夜の帳が落ちている。雪はやむことを知らず、相も変わらず粉雪のようなものが舞っている。
一つ伸びをすると、私はサイドテーブルに置かれた身着を手に取った。
「・・・?」
そして、違和感に気が付いた。というのも、触れた時点で違うとわかる上質な手触り。手の中に吸い付くようなそれは、私が着ていたものとは明らかに違う。
ーーこれは、スフィア王子が・・・?
普通に考えてそれ以外は有り得ないのだろうけど、少し考えてしまう。なぜ彼は私に新しい服を与えたのだろう。少し考え、そしてすぐに納得がいく。いくらモノともいえど、私はこれから王宮で過ごす身となる。私のみすぼらしい恰好は見るに堪えなかったのだろう。