第2章 *名前
ーー生きるためならば、金を稼がなくてはいけないように。
ーー王族なら、王族としての責務があるのでは。
そう考えた私は、率直に、そして端的に答えた。
僅かの間があってから、メリア王子が小さく口を動かす。彼はさっきのそっけなさが嘘なくらい優柔な表情を浮かべ、
「・・・と、ど・・・て・・・るね・・・」
「え?」
聞き取れないくらいの小さな声に、思わず聞き返す。
「メリア様?」
侍従も聞き取ることはできなかったようで、不思議そうにメリア王子を見つめる。
「別に。
・・・感情が無いアンタならそういうと思っただけ」
あーあ、公務とかめんどくさ、そう続けると、メリア王子が大きく伸びをした。
視線の先の侍従がホッとしたように安堵の息を吐く。
・・・嘘だ。
感情の機微に疎い私ですらわかる。
ーーー彼は、驚いた顔をしていた。