第1章 娼婦
「着いていたか」
「はい」
答えると、彼がつかつかと部屋にやってきた。
私はあわててベッドから起き上がり、姿勢を正す。
「自己紹介が遅れたな。
俺はこの国の第一皇子、スフィア=ロスタリアだ」
「と申します」
改めて自己紹介すると、彼は切れ長の瞳を細めて私を見た。
「お前のことは、今日から俺が面倒を見てやろう。
・・・よいな?」
「はい」
頷くと、彼は上着をベッドに投げ捨てて、私の顎を掴んだ。
「久しぶりに城下へ出たと思ったら、こんな面白い掘り出し物があるなんてな」
思いもしなった。
彼はそう続けると、私のワンピースをまくり上げた。
こういう行為には慣れているこそいるものの、僅かな戸惑いを禁じ得ない私に、スフィア様が口の端を上げた。
「ほぉ、お前も動揺などするのか」
「私も、初めての体験です。
ですが・・・スフィア様はいいのですか?」
私は遊郭の店で働いていた娼妓の身。
この体は、高貴な身分の方が、ましてや王子様ともあろう人が触れられるほど潔白ではない。