第10章 夏と、ラムネと、やっぱりわんこ。 R18
私が再び意識を取り戻した時、花火は終わっていた。
体を起こせば乱れた浴衣。
リエーフの浴衣は体液でべたべたになっていてこのまま帰れるのかすら不安な状態。
とりあえず先ほど足を洗うのに使用した水とタオルで応急処置をしたあと、乱れた浴衣を直してあげた。
私の方はというと、これは帯を解かないとどうやっても修復不可能。
タオルを濡らし、体液でべたべたする身体を拭くと、人目を気にしながら手早く浴衣を着直した。
髪の毛は、最初にまとめていた髪型にするのは無理があったので、1本のかんざしでまとめるだけの簡易的な髪型に。
スマホのバイブ音でふと、音駒のみんなと一緒に来ていたことを思い出し、スマホを見ればたくさんの着信とメッセージ。
そのほとんどがクロからのもので、最初は心配するようなメッセージがどんどん冷やかすようなものに変わっていくのが恥ずかしくて、どうしようかと思い悩んでいればまたバイブ音が鳴る
またクロがメッセージ送って来たか…
恥ずかしさと落ち込んだ気持ちを無理やり奮い立たせメッセージアプリを開けば、それはクロからのものではなかった。
『…けんま?』
珍しくけんまからのメッセージ。
何だろうと開いてみたけれど、すぐに恥ずかしさでスマホをメニュー画面に戻した。
”外では声は落としたほうがいいよ”
もうだめだ、生きる自信をなくした。
『っ…!りえーふの……ばかぁああぁあ!』
もう、もう!
絶対外でなんてしない!
そう思いながら八つ当たりも兼ねてリエーフの胸板を拳で叩けばやすやすと両手を拘束される。
「美優さん可愛かったから今度は家で…ね?」
何の悪気のない、そんな目で見つめられ、怒っていた気持ちが萎えていく。
こういうところが嫌いになれないんだよね…
『…花火終わっちゃったし……足痛いから家まで運んで…?』
精一杯のわがままを言えば、リエーフはにこり笑い私を軽々と抱え上げる。
私を抱えながらるんるんで帰宅するリエーフの気持ちと真反対の私の頭の中は、次にクロやみんなに会った時どう言い訳するかと、今日の夜眠ることができるのか、その2つでいっぱいになっていた。
次の日、ぐちゃぐちゃになった浴衣を見てため息をついたことと、数日後にクロとけんまに会ってからかわれたことについては次の機会にでも…
end