第10章 夏と、ラムネと、やっぱりわんこ。 R18
男子、女子ともに着替えが終わり、外へ出ればじりじりと焼け付くような日差しは夜に向けて傾いてきていた。
それでも暑さは和らぐことはなく、じっとしていれば汗が吹き出るくらいだ。
浴衣とお揃いの籠バッグからハンカチを取り出し汗を拭いていると、隣からやんわりと風が吹いてきた。
そちらを見ればリエーフが扇子を私の方に向けて仰いでいる。
『リエーフ、自分のこと扇げばいいのに…』
そう、リエーフに言えばリエーフはにかりと笑う。
「俺より美優さんの方が暑そうだから。うなじ、汗かいてる。」
そうリエーフは言いながら、うなじを流れる汗を指でつ、となぞる。
『…っ、リエーフッ!』
ばっ、と首を手で覆いながらリエーフを見るとリエーフは口端を上げ、笑う。
「美優さん可愛い。」
無自覚なのかわかってやっているのかはわからない。
でも浴衣姿でニヤリ、笑うリエーフはいろんな意味で破壊力が抜群。
一気に顔に熱が集中し思わず俯けば、空いた手にリエーフの大きな手が絡まり、ピクリと肩が跳ねた。
「お祭り、楽しみましょうね?」
ぽそり、呟かれた言葉に私はただ頷くことしかできなかった。
ーーーーーー
お祭り会場に着くと、私たちは人の波に乗りながらお祭りを味わった。
たこ焼き、焼きそば、お好み焼き。
わたあめ、あんず飴、ベビーカステラ。
クレープにじゃがバター、フランクフルト。
たくさんの屋台から自分の食べたいものを買って食べていたんだけど…
『リエーフ…どんだけ食べるの?』
リエーフの手には焼きそば、お好み焼き、たこやきにじゃがバターに串焼き。フランクフルトまである。
「だって見てたら食いたくなって…」
食べたくなって…の量じゃないでしょ?
そう突っ込みたくなったけれど私も人のこと言えないからやめた。
私の両手にはそれぞれクレープが一つずつ。
メープル風味と抹茶風味。
どうしても選べなかった時に横からリエーフが「食べれなかったら俺が残り食べますよ」って言ってくれたから買ったのに…
食べきれなかったらどうするのよ…
少し恨みがましい目でリエーフを見れば、不思議そうに首をかしげる。
まあ、リエーフが買ったものは食べきれなかったら家に持ち帰ればいい。
そう考えながら私は食べかけのクレープにかぶりついた。