第30章 夏、避暑にて。
梅雨入りと同時に増した暑さ。
6月の半ばだと言うのに気温はとうに30度を超え、不快感を増している。
『暑い…』
私もリエーフも、お互い仕事から帰ってから暑さによる疲労でなかなかクーラーの前から動けないでいる。それでも同じソファーでくっついているのだから、バカップルと呼ばれてしまってもしょうがない、と思う。
面倒だと思いながらも食事の後片付けに向かうつもりで立ち上がれば、リエーフの腕が腰に巻きつき先程と同じ場所に座ってしまう。
『リエーフ、洗い物するから…』
「美優さん、温泉行きません?」
出鼻をくじかれため息混じりの私にキラキラの瞳。私の聞き間違いなのか。今温泉って言った気がする。
『……温泉?』
頭の中の疑問をそのままぶつければ、今見ていた端末の画面を私に見せる。
「ここなんすけど、多分俺今年も盆すぎにまとまった休み取れそうなので…」
『行ってもいいけど、この暑さだから観光とかも辛くない?』
正直な話、6月からこんなに暑いのだからお盆過ぎの8月後半は暑さが引いているかがわからない。せっかく旅行に出ても観光もできなかったらつまらないんじゃないかなと思い、ちらりとリエーフに視線を向ければ、待ってましたと画面をスクロールしていく。