• テキストサイズ

【HQ】Egoist

第15章 恋心の行方(ヒロイン視点)


 ずっと友達だと、親友だと思っていた。及川もそう思ってくれてるのだと、勘違いしていた。

『…俺は莉緒ちゃんの事、友達だとも、親友だとも思ったことは無いよ。』

 そう言われ、キスをされた。
 信じていた人からの突然の裏切り…いや、及川は私の事を何とも思っていなかった。だから裏切られたんじゃない。私が勘違いしていて、ただ勝手に傷付いてるだけ。
 逃げようとした時、及川は何度も私の背中を押してくれた。辛い時、いつも傍に及川がいてくれた。その優しくて大きな手に、私は何度も何度も助けられた。一君がいなかったら、私は及川の事を好きになってたかもしれない。そう、思えるくらい、私にとって大切な存在だった。でも違った。今までだって心無い言葉を投げ掛けられた事なんて数え切れない程ある。それでも、下を向かずにいた。けど、及川のたった一言は今まで言われたどんな悪口よりも鋭い刃だった。

 及川にキスをされた所を一君に見られた。驚いていたみたいで、一君は気を遣ってか、慌てて教室を出て行った。私も一君の誤解を解きたくて、すぐさま一君を追い掛けた。
 及川とはなんでもない。及川が勝手にした事。私が好きなのは一君だよ、って。


「一君っ!」


 一君の背中を見つけ、私は叫んだ。すると一君は足を止めた。一人追い掛けてきた私を見て少し驚いたようだった。


「及川はどうした?一人で外歩いたら危ねえだろうが。」


 そう言って私に駆け寄ってきてくれる一君。一君にだけは誤解されたくない。


「あのね、」


そう思って、誤解を解こうと思ったのに、及川の顔が頭に浮かんだ。一君と及川は親友で、及川が一君を大切に思ってるのは誰が見ても明らか。普段一君は及川に当たりはきついけど、一君が及川の事を大事に思ってるのは分かってた。もし、私が事実を言ってしまえば、二人の関係を壊してしまうんじゃないか。そう思うと、言いたかった筈の言葉は音にならなかった。


/ 330ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp