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【HQ】Egoist

第13章 恋、気付く時(岩泉視点)


 四宮との一件以来、莉緒にどう接したらいいのか分からなくなった。
 そして青城祭後夜祭の舞台、ロミオとジュリエット。その主役に選ばれた今年のミスター青城の及川とミス青城の莉緒。いつも隣にいた二人が遠い存在に思えた。


「二人共綺麗。」
「お似合いだよね。」


 そんな声が観客席から漏れた。その言葉に納得しながらも、心の何処かで引っかかった。モヤモヤした気持ちを抱えたまま、舞台のラストシーンに俺は体育館の外へ出た。


「岩泉さん。」


 体育館を出てすぐ、声を掛けられた。


「あの、私、二年二組の立石沙耶香って言います。私、岩泉さんの事、ずっと前から好きでした!」


 突然の告白。そして、それは人生初めて受ける告白。まさか自分が誰かから好意を伝えられる日が来るなんて思ってもいなかったから心底驚いた。だから、こんな時なんて言えばいいのか分からなかった。


「気持ちは嬉しいんだけどよ、」
「私の事、知らないと思うし、気持ち悪いって思ったかもしれないですけど、知らないからって理由で断わられるのは嫌です。お試しって事で構いません。もし、岩泉さんに好きな人がいないなら、私にもチャンスがあるなら、付き合ってみませんか?それで、私の事を好きになれなかったらその時はその時点で振ってもらって構いません。なので、私にチャンスを下さい。お願いします!」


 彼女の真剣なその言葉に、よく知らないからと言って断ろうとしたその言葉を呑み込んだ。そして、頭に浮かんだのは、舞台に立つ及川と莉緒の姿。…折角俺みたいな奴に好意を寄せてくれてるのに、これを断ればもう二度と訪れないかもしれない機会。彼女の言うように、彼女の事をちゃんと知れば、好きになるかもしれない。なんてごちゃごちゃ考えていたら、


「…分かった。」


 そう、俺は口にしていた。


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