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【HQ】Egoist

第12章 好きでいてもいいですか?(ヒロイン視点)


 選手としてコートに立てなくてもいい。コートの外からでもいい。私を仲間として認めてくれる皆と最後のバレーを迎えられるなら。その気持ちに嘘は無かった。なのに、私はコートに立ちたいと思ってしまった。あのサーブを返すのが私だったら。あのボールを拾って、及川にボールを繋ぐのが私であれば。こんなにもコートに立って試合に出たいと思ったのは生まれて初めてだった。なのに、私は監督と溝口君の隣で頑張れと声を出す事しか出来ない。どうして私は女なのか。どうして私は男に生まれなかったのか。私の繋いだボールを繋いで欲しい。そう思ってしまった私はマネージャー失格だ。
 渡のレシーブに不満がある訳じゃない。松川のブロックに不満がある訳じゃない。金田一のスパイクに不満がある訳じゃない。花巻のフォローに不満がある訳じゃない。国見がコートに立つことに不満がある訳じゃない。賢太郎のスパイクだって、凄かった。賢太郎がいなかったらこんなにも得点に繋がらなかったと思う。
 あの、ファイナルセット、及川の超ロングセットアップ。あの日の、あの光景と酷く酷似したあの瞬間。一君は完璧なタイミングでスパイクに入った。あの日、私と美鈴さんが出来なかった攻撃、二人はボールを完璧に繋いだ。あの日の悪夢が打ち壊されるような感覚がした。このチームなら、勝てるとそう思った。皆を信じてる。その気持ちにだって嘘はない。なのに、私はコートに立ちたいと、皆と一緒にバレーがしたいと思ってしまった。我儘を言って泣く自分勝手な私を抱き締めてくれた及川は、ありがとうと言ってくれた。


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