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【HQ】Egoist

第10章 恋、気付く時(ヒロイン視点)


「岩泉の彼女だよ、あの子。」


 彼女の隣で笑う一君が、凄く遠い人に思えた。
 聞いてない、なんで、どうしてと騒ぎ立てる及川をよそに、私は一君の良さを理解してくれる人がいた事に安心感を覚えた。コイツが、一君に彼女が出来ないよう、告白されないよう、あの手この手で色々やってたのは知っていた。だから、一君の良さを分かってくれる人、一君の隣に立つのに相応しい女の子がいてくれたら。一君は私にとって特別な存在。だからこそ、一君に幸せになって欲しいと思っていたのに、どうしてこんなに心がざわつくのか。
 なんて思っていたら笑顔で彼女を見送った一君が戻ってきた。それを及川が、なんで、どうしてと一君を質問責め。


「及川うるさい。」
「莉緒ちゃん、だって彼女が出来たって大切な事、本人の口からじゃなくて他の人から聞くなんて嫌じゃん!なんで岩ちゃん言ってくれなかったのケチ!」
「お前がそうやって一々騒ぐと思ったからだよボケ!」


 嗚呼、そうか。この胸のざわつきは、一君の口から彼女が出来たって教えてもらえなかったことに対する疎外感か。


「一君、おめでとう。一君の良いところ理解してくれる子がいて私嬉しい。」
「お、おう。」


 夏休みの終わり頃からなんだか一君が少し冷たくなった気がしたのは、もしかしたら一君もあの子の事を好きで、でも、一君の近くにはいつも私がいて、彼女に勘違いされないように私との距離をおこうとしてたのかもしれない。だとしたら、一君に悪い事しちゃったな。


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