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【HQ】Egoist

第1章 最低最悪な彼女


「転入生見た?」
「見た見た!」
「超かわいい!」
「俺、まだ見てない!」
「あれ、アイドルかなんかだろ!可愛すぎだって!」


 廊下を通る奴らがそんな事を口々にするのが聞こえた。こんな時期に転入生なんて珍しいと思いながら、俺は岩ちゃんに現国の教科書を借りるため、五組の教室へと向かった。


「岩ちゃん、現国の教科書貸してー。」


 岩ちゃんの隣には初めて見る女の子。岩ちゃんを呼ぶと、その子も俺の方を見た。あ、転入生ってこの子の事か。ほかの生徒が騒いでたのがよくわかる。本当に可愛い。


「ほらよ。」


 現国の教科書を差し出す岩ちゃんを無視して俺はその子に話し掛けた。


「君が噂の転入生?可愛いね。」


 俺がそう話し掛けると、俺を見つめてくれるけど、無反応。さては、及川さんのイケメンぷりに言葉も出ないってやつかな?


「岩ちゃんなんかほっといて、俺と、」


 彼女の手をひこうと出した手は、彼女に叩かれた。


「岩ちゃんなんかってどういう意味?アンタみたいな軽いやつが一君より勝ってるとでも言いたいの?」


 美少女から発せられる言葉に思わず言葉を失った。俺を見つける彼女の瞳は実に冷ややかだった。そんな俺を見て、岩ちゃんが吹き出した。


「及川ざまあ!」
「岩ちゃん笑うなんてひどい!及川さん傷ついたよ!」
「及川、お前覚えてねーの?」


 そう言って岩ちゃんは彼女を指さす。こんな美少女会ったら絶対忘れないと思うんだけど、全く記憶にない。


「小学校の時一年だけ同じクラスだった橋口莉緒だよ。」
「…橋口莉緒。
ああ!四年の時のに転入してきて、また転校した子!」


 もう八年も前のことだからすっかり頭から抜けてたよ。確かに、小学生の時も可愛かったけど、昔はもっと素朴な感じで、こんなにキラキラした感じじゃなかった気がする。


「莉緒ちゃん、久しぶりだね。綺麗になってて誰かわからなかったよ。」


 そう言ってまた手を伸ばすとまた叩かれる。


「気安く触るな。」
「ちょっと!なんでそんなに及川さんに冷たいの!」


 彼女は俺の言葉にふんと顔を逸らした。岩ちゃんはそれを見てまた笑う。





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