第1章 【切甘】私だけが言えない言葉/及川徹
「…徹、アンタいつからそこに、」
「んー、遥香ちゃんがあの子達に連れて行かれた位からかなー。」
それって、最初からって事じゃん。ってことは、もちろん、徹に好きだって伝えられるのが羨ましいってことも、
「私、用事あるから、じゃ。」
その場を急いで去ろうとしたが、徹に手を掴まれた。
「ねえ、さっきのってどういう意味?」
心臓が今までにないくらいの早さで音をたてる。徹に心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかってくらい、私の耳に心音が響く。
「…さっきの、って何のこと?」
徹の傍にまだいたいの。だから、私たちの今のこの関係を壊したくない。お願い、聞かなかったことにして。
「なんか、あれじゃあ遥香ちゃんが俺に好きって言いたいのに言えないみたいじゃない?」
大丈夫、まだ誤魔化せる。いつもみたいに、徹のことどつけばいい。勘違いすんな馬鹿って。まだ、まだ、まだ、間に合う。なのに、言葉が出てこなくて、代わりに出てきたのは涙だった。徹は私が徹を好きだったと知れば、今まで通り、幼馴染みって訳にはいかなくなる。もう、徹の傍にいれない。