第1章 【切甘】私だけが言えない言葉/及川徹
徹の事を初めから好きだった訳じゃない。どちらかと言うと、いつもヘラヘラしてて、その態度にイライラするなんてしょっちゅうだった。
徹と私は一緒にバレーボールを初めて、2人してバレーボールにハマった。夜遅くまで2人で練習をしたり、時には喧嘩をしたり(とは言っても、一方的に私が怒るだけの喧嘩で徹は私に一度も怒ったことはない)。そうやってずっと、徹とバレーを続けていくつもりだった。
でも、中学最後の大会、初戦で腕を故障し、二度とバレーが出来ない体になった。そして、チームも初戦敗退。私は沢山、沢山、泣いて、バレーが出来る徹が羨ましくて、徹は何も悪くないのに、徹にキツくあたった。でも、徹は怒らなかった。
「俺が、遥香ちゃんの夢も背負う!白鳥沢をぶっ潰して、俺が全国に連れてくから、だから青城に行こう。」
そう言って優しく抱き締めてくれた徹のその言葉を信じ、青城に行った。この時、ああ、私徹のこと好きだったんだって、初めて気が付いた。と、同時に、私は徹に気持ちを伝えちゃいけない。そう、思った。