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短編集【庭球】

第69章 失楽園に咲く花は〔幸村精市〕*


私の身体はきっと精市とのセックスで、快感の奥にうっすらと、生命の危険に近いものを感じ取っている。
与えられる快楽が麻薬のように私の神経を侵して、それなしには生きていけなくなってしまうか、あるいは徐々にエスカレートしていく刺激の強さが、いつか私という人間を壊してしまうか。
自分の命がかかっているのに、精市と繋がっているとそれでもいいかもしれないなんて思ってしまう私は、本当に愚かで、滑稽だ。
そして、私が恐怖を快感にすり替えて啼くことをわかっていながら、恐怖で支配するふりをして私を抱く精市も、おそらく同罪。


スカートが床に落ちるのとほぼ同時に、下着をずり下される。
少しも触れられていないのに、糸を引くほど濡れて太腿が汚れたのがわかった。
目を背けたところでその事実は変わらないとわかってはいても、やっぱり恥ずかしさが優って目を閉じると、耳に直接「身体はいい子なのになあ」と吐息とともに吹き込まれた。
思わず目の前の腕にしがみつけば、その代償だと言わんばかりに片膝を抱え上げられて、ますます精市にすがらなければ立っていられなくなる。

自分の身体から発せられているとは思えないほど大きな水音が耳につく。
与えられる刺激は、ちょうど私が達せそうで達することができない、ぎりぎりのトーン。
きっとすべて計算づくなのだろうそれを、私の身体は歓喜に打ち震えながら、けれどもどかしく受け止める。

いっそこのままひと思いに快楽の底へと突き落としてもらえたら楽になれるのに。
そんな考えが頭をよぎる。
けれど一方で、突き落とされたら最後、もう戻ってこられないかもしれない、とも。

理性の先、私が私でなくなってしまうかもしれない恐怖。
頭の奥の奥、本能だけが知っている、生命の危機に近いもの。
何もかもを取り払ってむき出しになった私は、与えられ続ける快感に耐えうるのだろうか。
快感に飲み込まれて、壊れてしまうのではないだろうか。
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