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【DB未来トラ】想い

第9章 そして…



 ……好きだから。


 この想いを伝えたいから。


 だから彼に……トランクスに、もう一度、逢いたい。





 覚えのある感覚に、その願いが届いたのだと確信する。

 それでも恐る恐るゆっくりと目を開けていくユメ。


 そこは、簡易ベッドひとつだけの、殺風景な部屋。


 ……胸が、熱い……。


 ここに居たのは半年前の、たった4日間。

 それなのに、なんでこんなに……泣きたいほどに懐かしく思えるのだろう。

 相変わらずカーテンの無い大きな窓からは、夕焼け色に染まった空が見えた。


「本当に……また、来られたんだ……」


 ドキドキという心臓の音もひどく久し振りな気がした。

 それがこんなにも心地良い。


 ……ふと疑問に思う。

 この部屋は半年間、ずっとこのままだったのだろうか。

 もしかしたら時間軸がずれていて、こちらではあの日からそんなに経っていないのかもしれない。


 それより……彼は今、どこにいるのだろう。

 この時間はリビングの方かもしれない。



 ……本当に、逢えるだろうか。

 ちゃんと、伝えられるだろうか。

 ……もしかしたら、逢ってはくれないかもしれないけれど……。


 一瞬、萎みかける気持ち。


 だがユメは両頬をパンっと叩いて自分を叱咤した。


「ううん! もう、決めたんだから!」


 そのために、もう一度この世界に来たいと、強く願ったんだから。

 ユメは深呼吸ひとつして、夕焼け色の空を睨むように見上げる。


「よしっ」


 気合を入れた……そのときだった。

 背後にあるドアがシュッと音を立てて開いた。

 ビクリと体を強張らせるユメ。


 ……窓に、さっきまではなかった人影が映る。

 荒い息遣いが聞こえる。


 そして。



「……ユメ?」



 声を聞いた瞬間。

 全身が、沸騰したように熱くなった。



 ……もう、聞くことは無いと思っていた。

 もう、その声で名前を呼ばれることは、永遠に無いのだと思っていたのに。



 ユメは小刻みに震える身体をゆっくりと動かして、後ろを振り向く。



 そこに……トランクスが、居た。



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