第2章 【prologue】
打ち付ける、雫の音。
打たれて落ちた桜が、哀しそうに流れて行く。
肌に纏わりつく黒は、随分心地よく感じた。
「…"春霖"」
そう囁いて、腰に差した大太刀に触れれば、それは呼応する様に嬉しそうに揺れる。
雨が降り注ぐこの不安定な気候こそ、この刀にとって何よりも嬉しいものなんだろう。
「…そろそろ行かないと、かな。」
雨雲の陰に見えた、朝陽を見上げて私はそう呟く。
--------------…季節は【春】
降り注ぐ雨が、私の"罪"も"咎"も洗い流してくれたらな、なんて。
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(歯車が回りだすのは、)