第2章 やっと一歩
台本をもう一度見て、思ったことがある。
わたしが演じる、星野葵はわたしに似ている。
一度決めると、とことん進み続ける頑固なところ。
回りをよく見れなくて、よく空回りするところ。
挫けてしまっても、もう一度立ち上がる方法を知っているところ。
そして何よりも、歌が大好きなところ。
わたしがなりたかったもの、そして、なったものは声優で、彼女がなりたいものは歌手。
目指すところは違えど、歌が好きなのは一緒。
そして、そのきっかけをくれた人がお互いにいることも一緒。
彼女の場合は、片想いしていた瞬に借りたCDの歌手に。
わたしは、宮野さんに。
目指したものも、そのきっかけをくれた人は互いに違うけど、その思いの強さは同じ。
それが分かった瞬間。
できる、と思った。
星野葵はわたしだ。
わたしなら、彼女になりきれる。