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君だけに届ける【VOICE】

第2章 やっと一歩


その沈黙を破ったのは、隣にいる下野さんだった。

「新人の頃の俺さ、オーディションにも落ちてばっかで声優をやめよっかなって何度も思ったんだ。でもさ、やめたくなかったんだ。この仕事、楽しいし」


わたしはただただ黙って頷きながら話を聞いていた。

この人が言いたいことがよく分からない。


「だからさ、えっと······その、何て言うんだろ·····。ああー!まとまらねえ!つまり、俺が言いたいのは、諦めずに頑張れってこと!!」


·······この人は······


『ぷっ······あははははははっ!』


なんて、不器用で優しいんだろ。


「あー、後輩にいいとこ見せようって思ったのに·····!かっこ悪ぃ·····」


ソファーの上に足をあげ、耳を真っ赤にしながら小さくうずくまって体操座りをするこの先輩が今は誰よりもかっこよく見えた。
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