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孤高と称された王子

第1章 出逢い


僕が礼を言うと、彼女が笑った。
周りに花が咲いたような、可愛らしい笑顔だった。

そういえば、僕は彼女の名を知らない。

「君の名前は?」

『ミリアっていうの。あなたは?』

「僕?僕は····ユーリアだ」

昔、僕がよく読んでいた物語の主人公の名前。

本名、リリアン・クリストフと答えると、大分面倒くさいことになる。
一国の王子が町の者に変装して潜り込むなど、絶対にあってはならないのだから。

僕はこの国の象徴になるのに相応しい者にならなければならないのだから。


「それじゃあ、僕はそろそろ行くよ」

『もう?また、来てね』

そう言って手を振る。

「······ああ、また」


また、来る。


とは、言えなかった。
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