第1章 出逢い
特に意味などなかった。
ただ、なんとなく今日は町に下りてみたい気分だった。
「少し、町に行ってくる」
「リリアン様っ!?何故に町に行かれるのですか!?」
だから、理由などない。
「散歩だ」
「ご一緒します!」
付き人のミカエルが慌ててついてこようとする。
だが、僕はそれを制止した。
「僕ひとりでいい。ミカエルはお父様に適当に言い訳をしておいてくれ」
「ええっ!?」
装飾のほどこされた悪趣味な服を脱ぎ捨て、ラフな町民の服装に着替える。
王家の者が町民になりすまし、町に下りるなどあってはならない。
だが、息の詰まるこの城にはいたくないんだ。