第13章 月夜の語り
『怪傑アリババ』であるアリババは、ハイリアがイメージしていた人物とは、随分とかけ離れていた。
迷宮ダンジョンを攻略し、財宝のほとんどを奴隷達の解放に使った人だと聞いていたので、きっと知識、体力共に備わった、頼りがいのある人物なのだろうと思っていた。
けれど、実際の目の前の人は、昼間みかけた頼りなさそうな人で、とてもそんな立派なことをした人物には見えなかった。
けれども、二人がいう優しい人だということは、なんとなくわかる気がした。
彼のもつ雰囲気が、親しみやすく、柔らかいものだからかもしれない。
でも、だからこそ、彼が『霧の団』のトップで、世間を騒がせている内乱の首謀者だなんて、とても信じられなかった。
モルジアナが連れてきた『アリババくん』は、アラジンと向き合って座り込むと、しばらく落ち着かない様子で黙っていた。
気まずい空気に、話す言葉が見当たらなかったのかもしれない。
「みんな、久しぶりに会ったわけだし、楽しい話をしようよ!」
明るく笑ったアラジンの提案で始められた、月夜の会談は、第七ダンジョンの攻略を終えたあとの、それぞれの旅路の話から始まった。
アラジンが、黄牙一族との出会いと別れ、モルジアナとの再会、ハイリアとの出会いを話すと、次に自然と、モルジアナがそれまでの旅路について話し出した。
モルジアナの話に、ハイリアが混じるようにしながら、キャラバンでの旅路と、盗賊の砦での出来事、アラジンとの再会、バルバッドにきた理由を話した。
終えた頃には、気まずい空気に包まれていた部屋は、いつしか明るい雰囲気へと変わっていた。
「僕たちはそうやって、バルバッドまでやって来たんだ。そして『霧の団』を捕まえることになった。まさかそこに君がいるなんて思わなかったけれど……」
アラジンがそう言って、ようやく話は佳境を迎えた。
「……でも、何の理由もなくアリババくんがそんなことをするとも思わないんだ。教えてよ。君が『霧の団』にいる理由を」
アラジンが、まっすぐとアリババを見つめた。