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【マギ*】 暁の月桂

第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕


恨みや憎しみは、人を束縛できる。

それを知っているから、眼差しが逸らされないように必死になって、おまえを傷つける。

それなのに、おまえが泣いているのを見ていると、妙な気分になるんだ。

おまえが堕転することを望んでいるはずなのに、胸の奥がやけにズキズキと痛んでとれなくなる。

いつまでも、いつまでも……。

── バカみてぇだろ? おまえを堕転させようとしているのに、苦しめることが煩わしいなんて……。どうしたら、この痛いもんがなくなるかも、よくわかんねぇーんだよ……。

柔らかな温もりを腕に抱き込みながら、ジュダルはようやく訪れた緩やかなまどろみの中に落ちていった。

眠っている間は、余計な事を考えずにすむからいい。

闇が覆う心地よさに埋もれてしまえば、すべてを忘れていられる。

ハイリアのことで面倒な気分になることもなければ、くだらない感情にいちいち振り回されることもない。

胸を締め付けるようなあの痛みからも、しばらく離れていられる。

このまま深い眠りに沈んでしまおうとしたその時、かすかな光が目についてジュダルはそこへ意識を向けた。

それは暗闇にチカチカと瞬く、小さな一粒の光だった。

星粒のようにか細いのに、妙に目が惹かれる懐かしい感じがする光。

純粋で、透明で、どこまでも純白な……。

── なんだ、あの光……?

どこかで見覚えがあるようなそれが気になって手を伸ばしたとたん、視界いっぱいに白が映りこんでジュダルは目を丸くした。

いつの間にか、純白の光に覆われる場所に立っていた。

一瞬、またハイリアの記憶の中に引きこまれたのかとも思ったが、どうも違う。

無理矢理引きずられるような感覚もなかったし、夢の中で必ずどこかにいたあいつの姿もここにはない。

いるのは無数に飛び交う白ルフたちだけで、それが真っ白な空間を埋め尽くすかのように、ピィーピィーと騒がしい鳴き声を上げながら自分の周りを飛んでいた。

── なっ……、なんだよ、ここ!?

見渡す限り白ルフだらけのその場所は、闇を消し去るほどの純白の光で包まれていて圧倒された。

堕転した自分のような者が来る場所ではないのか、脱力感に襲われて動こうにもうまく身動きがとれない。
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