第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕
可能性としてはありえる。二種類のマゴイがぶつかり合って、あいつの中で暴走しているのだとしたら、恐らくあいつはマゴイをコントロールしきれない。
治められなくなったマゴイが暴走して、あいつの身体を傷つけ、魔法が生み出されているのだとしたら……。
「あーっ!! ごちゃごちゃ考えても仕方がねー! 」
とにかく、こいつの溢れ出すマゴイを早いところ止めないと、この馬鹿げた魔法は治まらない。
マゴイを治める魔法なんて知らないが、どうにかしなければこいつは死んじまうのだから。
ルフはハイリアのマゴイを食らうように引き寄せられている。
この騒がしい鳥どもを止めれば、ハイリアのマゴイも行き場を失って治まるような気がした。
「くっそ……! 治まれ、バカシロ!! 」
杖を掲げてハイリアに集うルフを奪うようにマゴイを集め始めたとたん、なぜかハイリアから発せられるマゴイが、赤い杖先に勢いよく集まり始めた。
── なっ!?
慌てて集まったマゴイを散らすと、ハイリアから引き寄せられたマゴイも拡散した。
「なんだよ、今の……」
今のはルフに命令したはずだ。
── なんで、ハイリアのマゴイが集まった?
戸惑いながら、もう一度杖を掲げてルフたちのマゴイをかき集めようとしたが、やはり杖先に集まるのはルフだけでなく、ハイリアのマゴイも引き寄せられてくる。
青白く発光するハイリアの身体に、ジュダルは目を見張った。
「おまえ……、いったい……!? 」
淡く光るその姿は、騒がしく飛び交うものによく似ている。
青白い光を宿して、細かな氷の粒子が混じる風を作り出している、無数の白い鳥たちに。
馬鹿げた考えに、呆れながらも戸惑った。
その姿が、あまりに似通いすぎていて……。
── いや、そんなバカな話があるか!?
ハイリアはどう考えたってヒトだ。
あんなふらふら飛び回っている小さな鳥じゃない。
それなのに、ハイリアのマゴイはルフと同じように杖先に引き寄せられてくる。
切れかけているマゴイを、余計に消耗させながら。