第26章 緋色の夢 〔Ⅺ〕
暗闇の中で何度も黒の記憶を見つめていた。
繰り返し、繰り返し、黒の螺旋に身を染める。
闇に問えば、黒ルフたちは教えてくれた。
憎む心を。
恨みを。
仇を成す方法を。
誰かの記憶の螺旋から。
その中から奴らに対抗しうる手段を見つけるために、深い闇の奥へも進んで足を踏み入れた。
痛く冷たい感覚にも耐えてうもれる。
黒ルフたちの闇にもだいぶ慣れた。
目的を果たせればいい。
そのために堕ちてしまうのなら、悪くないとさえ思っていた。
一つ、一つ、必要なピースを記憶の欠片から拾い集める。
それと自分がもつ知識を重ね合わせて、一つのものに仕上げていく。
また一つ、有益な情報を囁かれて、ハイリアはその黒ルフに手を伸ばした。
手の平にとまった一羽の黒ルフを額に寄せて、まぶたを閉じる。
流れ込む闇の記憶にうもれれば、黒ルフが言っていたことが脳裏に浮かび上がった。
── ありがとう。そんなやり方もあるのね……。
くすりと笑って黒ルフを飛び立たせ、再び渦巻く闇を見据えた。
── 他にはない? 教えて、ワタシに……。
ざわめく黒ルフに呼びかける。
知識が欲しい。
思い描いていることが、最高の確率で成功を叩き出すものが。
それが例えどんなに非情なものであったとしても。
『良い方法は見つけたかね? 今は限りなく黒き娘よ』
声がして振り返ると、闇にたたずむ黒い巨鳥がこちらを見下ろしていた。
あれからずっと側にいる。
傍らで黒ルフの記憶を覗く、自分のことを監視するかのように。
── いくつかは見つけた……。けれど、まだ足りない……。黒鳥さんは、何か知らないの?
『くはははっ! 我をも使おうとするか、たいした娘よ。だが、おまえの知りたいことは、すべてその黒ルフどもが知っているはずだぞ』
── そう、黒鳥さんは、大きいのに役立たずなのね……。
『我を役立たず呼ばわりか。お主にとっては、そうかもしれぬがな。この膨大な黒ルフどもをたった一日で従え、我が物のように扱うおまえには。
このまま、あの「マギ」さえ手玉にとるつもりか? 』