第25章 緋色の夢 〔Ⅹ〕
覆面の男たちに手を引かれていくジュダルは、歩きながら滅びた街を振り返り眺めていた。
街を見つめる影を帯びた赤い眼差しが、今の彼が時折見せる寂しげな表情と重なって、目が離せなくなる。
ジュダルだって、元から全てを恨んでいたわけじゃない。
誰かを傷つけようと思っていたわけじゃない。
彼を変えて、黒く染めてしまったのは……。
全部、全部……。
── アナタのせいだったのね!
黒の記憶に映る闇のような女に憎しみを覚えて、ハイリアは睨み付けた。
燃え上がるような怒りの感情が消えない。
許せなかった。
彼を苦しめたことが。
おとしめたことが。
それを笑って、今も行っているだろうことが。
── 許さないわ、ワタシは……。
あの女も、そこに集う者たちも。
── 許サナイワ、絶対に!
あんな者たち、いなくなればいい。
そう、いなくなればいい。
跡形もなく、いなくなってしまえば。
── ソウダ。アンナモノ、スベテ壊レテ、消エテシマエバイインダ……!!
激しい黒の感情が沸々と湧き上がるのを感じながら、ハイリアはその矛先の向けどころに気づいてニッコリと微笑んだ。
闇にたたずむ黒い巨鳥が、楽しげに側で笑っていた。