第23章 緋色の夢 〔Ⅷ〕
紫色のしらやむ空を見上げ、ひんやりとした空気をまとう廊下を歩き出すと、すぐに頭に響くような声が聞こえた。
『やはり、行かれるのですね……』
銀の腕輪に浮かんでいるだろう、金色の瞳は見なかった。ただ、まっすぐに陰る通路の先を目指す。
「……邪魔をする気なら置いて行くわ。もう、決めた事だもの」
『わかっておりますとも……。私の力では、あなた様の一途過ぎる思いをお止めできないのだと、骨身にしみてよくわかりましたから……』
「あら……あなたでも、皮肉を言うのね? 」
『……ご容赦下さい。あなた様が突き進まれるなら、私も覚悟を決めるまで。我が愛しの王の行く末を、最後まで見守り続けることをお約束いたしましょう。あなた様は、私が選んだ王の器ですから……』
堅苦しい言葉を並べるアイムのため息が聞こえて、ハイリアはうっすらと笑みを浮かべた。
「ありがとう、アイム。感謝するわ」
奥にある闇を見据え、ハイリアは濃紺の影の中へと姿を溶け込ませた。