第20章 緋色の夢 〔Ⅴ〕
こんなもの知らなければ、見えなければ、こんなに悩む事なんてなかったと思う。
ルフが見えなければ、黒いルフが異質だなんて思わなかった。
ジュダルとの隔たりになっているとも感じなかった。
宮廷の闇に気づくこともなかった。
でも、見えてしまうから気になってしまった。知らなければと思ってしまった。
思いついてしまった方法は、我ながらひどい方法だとは思う。
でも、誰にも気づかれないで事を進めるには、この方法しか思いつかなかった。
「ごめんね……」
ぽつりと小さく呟いて、ハイリアは彼の側に飛び交う漆黒のルフに手を伸ばし、つかみ取ったそれを小瓶の中に入れこんだ。