第2章 的場さんと私(2)
日も暮れてからだいぶ時間が経った現在。
所用で的場の屋敷を訪れていたが、自分の住み処へ戻ろうとしていた時だった。
ダンッ!と勢いよく壁に押し付けられた背中から鈍い痛みが響く。
衝撃に目をキツく閉じれば、すかさず冷たい自分の唇に、似た唇が重なった。
「ん、ぅッ・・・!」
うっすらと目を開けば、そこには的場の姿があった。
この屋敷の主人なのだから、いて当然と言えば当然だが、外出していると聞いていたので少し驚いた。
そんなの胸中を知ってか知らずか、唇の温度とは違う熱い舌が入ってくる。
逃げ場のないの舌は意図も簡単に絡め取られ、時折強く吸われた。
「ふ・・・ぁッ、ぅ・・・っ」
「・・・・・・」
熱い吐息が洩れ、どちらのものともわからない唾液がツー・・・との首筋を伝っていく。
次第に意識が朦朧としていくのがわかり、精一杯の抵抗を試みるが、体を完全に押さえつけられていてそれは敵わなかった。
「あっ・・・」
「どうしました?」
不意に口内の熱が無くなり声を洩らすと、目の前にいる的場がクスクス笑いながら、至極楽しそうにを見ていた。
からかわれたような気がして、は顔を赤く染めながらすぐに視線を反らした。