第3章 次の任務へ
「なんか胡散くせえよな。あのおっさん」
「アキさんもそう思います?」
部下と共に美術館全体を警戒してくれるハルと別れて、私は今アキと監視室にいる。
監視カメラのモニターを睨みながら、ボソリと呟かれたアキの言葉に嬉しくなる。私の勘も、あながち捨てたもんじゃないかも。
「態度だけは下からだったけどな。あの見下したような目は、俺達のこと絶対信用してねーよ」
なるほど。アキは勘なんかじゃなくて、ちゃんと観察した上で、経験に基いて判断してるんだな。幹部の彼らは、すごく若いから…第一印象で馬鹿にされることもありそう。
「おい、ボケッとしてないで働けのろま。お前の脳みそは食い物にしか反応しねーのか」
「し、失礼な!ちゃんと働いてますっ」
酷くない?酷いよね?パワハラだよ、パワハラ。
アキに暴言を浴びせられながらも、私の指はモニターを操作し続けている。泥棒の犯行の瞬間が映っていないか、それらしい不審人物がいないか。
ずっと見続けるのはさすがに時間が勿体ないから、超高速で早送りしながら映像をチェックしてる。見落としなんて、しないよ?これでも幹部の右腕ですから。
…たとえ、言葉の暴力に晒されようとも。なんて出来る部下なのかしら。
「はあ…」
「へえ、ため息つく暇あんだ。なら、お前あとやっとけ」
「へっ!?」
「よろしくー」
冗談かと思ったのに、アキはひらひらと手を振って監視室から出ていってしまった。
開いた口が塞がらない。