第1章 不死コンビと賞金首
『また暁が出おった』
派遣先の大名屋敷でその名は有名だった。
新進気鋭と言うのもなかなかに変な話だが、各里の抜け忍を引き入れ近頃めきめきと頭角を現してきた犯罪組織だそうで。
赤雲模様の外套を見たらとにかく逃げろと、そう聞いていた。
「角都、お前言ったよな?女は俺の好きにしてイイってよォ」
「黙れ飛段。話が変わったと言っているだろう」
仲間の墓を暴かれた木の葉の忍ならまだしも、そんなおっかない犯罪者共から襲われる謂れも、もちろん助けられる謂れも無いはずなのに…。
何とか逃げおおせないものかと、尻もちを付いた状態のままそろりそろりとアオイは後ずさる。
「オイ角都、女が逃げるつもりみてぇだぜ?」
「言われずとも逃がす気は無い」
ボコボコボコ。地面から突如生えた腕がアオイの足を掴む。
「ひぃ!?」
その腕は先程アオイを庇った大柄の男、角都と黒い触手で繋がっていて、ドクンドクンと心臓のようなものが脈打つ。
「なに、これ…痛っ!」
じたばた藻掻けば藻掻く程に掴む力が強まる。
足を掴む浅黒い手。それは"死"という本来目には捉える事が出来ない恐怖、足元に迫る逃れられない恐怖を体現している様で。
彼は先程、赤い刃からアオイを庇ってくれたはずだった。しかしそれは庇った様に見えただけの話であって、その実男に助ける気など無いのだと、遅れ馳せながらアオイは理解した。
「大人しくしていろ」
低く冷たい声が響く。身体の芯まで響くその声は、脅迫なのか嗜めているのか…とにかく不気味だった。
しかし大人しくしたところで、状況は好転しない。
未だ言い合いを続ける暁の二人組をちらりと伺い、アオイは懐から素早く巻物を出し、広げる。