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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第37章 デジャビュ?/ジン,ベルモット


「あ、沖野ヨーコちゃん。」
「星野輝美だー!観てたなー女流棋士シリーズ。」
窓の外や会場内を神経質に見回しているジンとは対照的に、手持ち無沙汰な私は招待されている芸能人達を目で追っていた。
「あ、見て、スピリッツのヒデじゃない?よく見るとスポーツ選手も多いね!」
「…おい、あまり目立つような真似は、」
ジンがやや咎めるように口を開く。
幸い会場のざわつきのおかげで私の声は誰の耳にも届いていなかったようだが、ここにいる人たちの印象に残るような言動は慎むべきだったと反省する。

ごめん、と呟いて俯くと、その視界に影がさした。
「失礼致します。乾杯用のシャンパンをお持ち致しました。」
そのグラスを持って来た男性スタッフの顔を見て思わず声を上げそうになった。
ギリギリのところでそれを抑えた結果、私の口はぱくぱくとまるで酸欠の金魚の様に開閉を繰り返す。

「テメェの考えそうな事だな、バーボン。」
その男性スタッフ、安室さんは顔の前で人差し指を立てると片目を瞑った。
「その名で呼ばないでくださいよ、バレたらややこしいことになるんですから。」
さくらさんも、他人のフリでお願いしますね、と言い残し彼は私達の手にシャンパングラスを握らせると再び人混みに紛れた。
なるほど、安室さんはスタッフとして潜入しているということなのだろう。

ちらりとジンを見ると、既に視線は窓の外。
私は再び芸能人ウォッチングに戻ることにした。今度は迷惑をかけないように口は噤んでおくことにして。
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