Everlasting Lovers *ディアラバ*
第8章 エドガー
兄を探しに来た?
目の前の女は確かにそう言った。
昔エドガーと遊んでいた時、あいつの妹が付いてきたことがある。
それから しばらく3人で遊んだから なんとなく顔は覚えてる。成長してるとはいえ、面影はあった。
でも おかしい。兄を探してる?
エドガーは死んだはずだ。
幼い頃、俺は 外の世界を知らなかった。 厳しい母親に毎日、勉強を強いられ それ以外のことは 何も求められなかった。変わらない毎日、俺を後継者に仕立て上げようとする母親、俺にばかり構う母親や俺に対し敵意を抱く弟 全てが億劫だった。母親はよく言った。
「 貴方はお父様の大事な後継者。余計なことはしないでいいの。
ましてや 汚い外の世界など触れてはいけません。」
こんな毎日が続くのがうんざりだった。
だから ある時、屋敷を抜け出した。
「 ここまで来れば、誰にも見つからないよね…」
住宅街より 高台にある丘。日の光を遮る物はなく 一身に感じる。本来 あまり気持ちいいものじゃないはずが、何だかとても心地よかった。空に向けて、手を伸ばす。いつもは薄暗い天井だが 今、手の先には 突き抜けるような青い空が広がっている。
「 お前、何してんだ?」
同い年くらいの茶色い髪の人間が立っていた。
「 …空を見てて。」
「 変なやつ。しかも お前、吸血鬼じゃないか。」
「 なんでわかるの⁈ 」
「父さんと母さんが ヴァンパイアハンターだからな。それくらい俺にも わかるっつの!」
吸血鬼だとわかっても話しかけてくる人間が奇妙だった。
「 … 僕のこと 怖くないの?」
「 言ったろ? ヴァンパイアハンターの息子だからな!俺は強いんだ。 それに、お前 悪いやつに見えないし。」
そして、人間は こう言った。
「 人間と吸血鬼だって相容れないわけじゃないぞ! 俺の父さんは吸血鬼と仲よかったからな。かっけーだろ? 世界が広がる気がすんだろ?」
世界が広がる …
空に手を伸ばした時、こんなにも 世界は広いのか と思った。
でも、広さは空間だけを意味するんじゃない。
変わり映えのない退屈な毎日、こいつといれば そんな毎日が変わるような気がした。世界が広がる気がした。