第2章 見惚れる私
褒められることにはなれていないせいなのか…
口元が勝手にゆるんできてしまう。
…こんな顔みられたら、死ぬ!!!!
「香織ちゃん!!! タイム測るのお願いしていー!?」
丁度、真琴先輩の後ろから江ちゃんがピョコリと顔を出してタイマーを差し出してきた。
先ほどまでプールに入ってたはずの遥先輩と怜くん、渚くんはすでにプールサイドに上がってスタート台の前で準備運動をしていた。
「あッ、うん!!」
江ちゃんの手から半ばひったくるようにタイマーを取ると、プールサイドに向かう。
なんとなく顔が熱い気がする…。
やっぱり、プールサイドが熱いって本当だったんだ…
「真琴先輩は泳ぎますか?」
「…そうだ、ね。俺も泳ごうかな。」
始めにスタートしたのは、渚くんと怜くんだった。
渚くんは平泳ぎが専門らしく、伸びた姿はさながらペンギンのようで…まるで水の中で飛んでいる様に見える。
対する怜くんは、少しぎこちない気がしないでもないが、羽化したての蝶が一生懸命に羽ばたいている様に見える。
…すごい。
私の知っている水泳はもっと…、苦しくて、歩く法が断然早くって…無駄にしか思えない。ちっとも綺麗じゃないはずだ。
それなのに、今私が見ているのは…。
彼らはどんな世界をみてるんだろう…?
渚くんが先にゴールし、怜くんもそれに少し遅れる形でゴールした。タイムが速いのかどうかは分からない。
けど、江ちゃんの持っていたノートに記入してあるタイムを見れば、今までの中でも早い方なのだと言えるのだろう。
「すごい…」
「…? 香織ちゃん?どうしたの?」
思わず呟いた私の言葉に江ちゃんが首を傾げる。
「渚くんも、怜くんも、空飛んでるみたいだった!! あッ、でも、渚くんはペンギン!!って感じだし、怜くんは羽化したての蝶ってゆーかさ…」
半分興奮交じりに江ちゃんに語る。
と、背後から面白そうな笑い声が聞こえて来た。
後ろでは、真琴先輩がおかしそうにお腹を抱えている。
中々収束しそうにない笑いをふーッっと息を吐き出すことによって収めると、私を見てニコリと笑った。
「石田さん、面白いこと言うんだね。」
「…そう、ですか?」
「うん。想像力が豊かって言うか…俺、いいと思う。」
そう言って再度ふふふっと笑うと、今度は真琴先輩がスタート台に立った。