第7章 Fate/...? 全ての終わりと、全ての始まり
閉じたまぶたの裏側――懐かしい世界がみえる。私の、生まれ育った『現実の世界』がみえる。
そこでは、家族が、友人が、私をさがして、奔走していた。
――泣きそうになるくらい、懐かしい、大切なひとたち。
このまま、目を閉じたまま、意識を手放せば、『あちら』へと帰れるのだと、確信にも似た思いがあった。
だけど、それとは別に、まぶたの向こうに、広がる世界を感じる。私にとっては『架空の世界』だった――『あの世界』の存在を感じる。
――誰の姿も、声も、ない。けれど、たしかに、そこには、本来なら出会うはずのなかった、私の大切なひとたちが存在しているのを、私は知っている。
目を開けば、きっと、また、『あの世界』で、やり直すことができるのだろうということも。
――選択を迫られているのだと、感じた。
私は、このどちらかひとつの世界を、選ばなければいけないのだと。
心が揺らがないわけじゃない。つらくないわけじゃない。でも、答えは、とうの昔に決まりきっている。
けれど、だけど、だからこそ――
「……ごめんなさい」
まぶたの裏側で、私をさがす彼らに、手を伸ばす。
さっと、ひと撫ですれば、その人の中から、私との記憶が消えていく。一人、また一人と、私のことを、忘れていく。目頭が熱くなって、涙がこぼれる。だけど、私は手を止めない。
もう二度と、帰ることが叶わないのなら、誰も、私を認識することができなくなるのなら、せめて、私のことで悲しむことがないように――
そして、私はまぶたを持ちあげる。
そのとき、私は全てが終わり、全てが始まるのを感じた。
「過去の未来」が、人々へ“記憶”として返還されていく。あるはずのなかった「二度目」の物語が、幕を開ける――