• テキストサイズ

アイサレテル [R18]

第5章 再会





ポストの中身を片手で乱暴に置いて

重たい野菜や果物が沢山詰まった紙袋をキッチンの台にどん、と置いた。



時計を確認し、一杯の水をお盆にのせる。



そしてそれを持って寝室へとむかった。






起こさぬよう静かに入ると、




「お帰りなさい。」




優しい笑顔が僕を待っていた。




「起きてたんだ?。

ただいま、お母さん。ほら、薬の時間だよ。」














父を避ける日々を続けていたある日、


母が倒れた。




裕福ではなかったから、


朝から晩まで勤めていた疲れがたまったのだろう。


そう思っていたが


医師から告げられたことはもっと深刻だった。


母の病気はとても特殊なもので、放って置けば死に至るらしい。


完治しない病気ではないが



それには長い間、薬を飲み続けなければいけなかった。



治る病気と聞いてほっとはしたが、


悲しいことに


その薬は、今の家の収入では


買い続けられるほど安くは無かった。











「今日の夕飯はポトフだよ。最近こればっかりでごめんね。」




ううん。と首を横にふり、
ありがとうと弱々しい力で僕の手を握る。







僕は学校をやめて、働いていた。


薄給だけど、


貯金を崩す速度は少しだけ遅く出来た。







キッチンに戻り、

買ってきたものをさばく。

すると、1通の手紙が目についた。









フェイ君からだった。







そういえばあれからそろそろ一年がたつ。




僕はその間、フェイ君と文通のやり取りをしていた。




月に一回ほどだったが、


彼は毎回違う綺麗な便箋と封筒に


素敵な香りを付けて手紙をくれた。



僕はそれが嬉しくて楽しみで、いつも頃合いになるとポストを気にしていた。




同じことは


流石に出来なかったので、


替わりに幼い頃から集めていた


風景切手を貼って返信していた。



彼はそれをとても気に入ってくれて、手紙でよく褒めてくれた。











内容はいつもと変わりなく、日々起きたことや本の感想とかだった。

そして決まって、また会えるのを楽しみにしていると終わる。



手紙を読み終えると同時に



玄関の閉まる音がした。



/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp