第11章 軋み始める関係
「鈴!」
校門を出ると、すぐ横で待っていたおそ松くんが私に駆け寄ってきた。
「久しぶりだなー!ぜんっぜん会えなくて俺寂しかったよー」
そう言って彼は、私の体を優しく抱き締めた。
「あっ…お、おそ松くん…っ」
「大丈夫、誰も見てねぇって。ちょっとだけ」
ああ、やっぱり…好きだなぁ。
彼に甘やかされたり、優しくされたり、大事にされてるなぁって実感したり。
何より、久々に見た彼の笑顔や、久々に聞いた彼の声が…すごく愛おしい。
こんなに好きなのに
私の胸の中は、罪悪感でいっぱいだなんて…
「よしっ、十分堪能したから帰るか!」
彼の笑顔には、一点の曇りもない。きっとイッチーからは何も聞いてないんだろう。
けど、それで罪悪感が消えるわけじゃない。
隠し事なんてよくないのは分かってる。前イッチーと揉めた時、私はおそ松くんに本当のことを言えなかった。もう、黙ったままは嫌なのに。
「鈴、ほら手!」
「…うん」
差し伸べられた彼の手に、自分の手を重ねる。
…このぬくもりを、手離したくない。
彼との繋がりを、断ち切りたくない。
真実を伝えたら、幸せが音を立てて崩れていく気がして…怖い。
…また私は、彼の優しさに甘えてしまうんだ。
***