第11章 軋み始める関係
【鈴side】
「………」ぼー…
「はい、じゃあ次の問5を…天川さん」
「………」ぼー…
「天川さーん?」
「…おい天川、先生に当てられてるぞ」
「………は!え?あ、はい!」ガタッ
「問5、答えてくれる?」
「問5?あー、えー…ど、どこ…?」
「…一体いつから授業を聞いてなかったのかなー?」
「すっ、すみません!!」
はぁぁ…またやっちゃった。これで1、2、3限連続ノックアウト…とほほ。
「今日は厄日だねぇ、鈴。ぼけーっとしてる時に限って先生に当てられまくりとか笑える〜」
「…はぁぁ…」
「あり?冗談通じない」
「重症だわ」
側で怜衣と遥香が何か喋ってるけど、全く耳に入ってこない。それどころか授業すら右から左だ。
あさってはもう文化祭なのに…昨日のあの衝撃がいつまでも頭をちらついて離れない。おかげで気持ちの切り替えができないよ。
!だめだめ、また思い出してきた…!
***
昨日の放課後。
イッチーに突然キスされた。
すぐに唇は離れたけど、すっかり硬直してしまい、まともに喋ることすらできない。そんな私を、彼は感情の見えない眼差しで見下ろしてくる。
彼は何も言わず、机にかけてあった自分のカバンからウェットティッシュを取り出した。
1枚引き抜くと、それを何の迷いもなく私の唇に押し当てる。
Σ「うぇぶっ!?」
ゴシゴシと乱暴に拭かれ、さらに混乱する私。
やがて拭き終えると、彼はようやく口を開いた。
「…ごめん。今の、忘れていいから」
「…!え…」
彼はそれだけ告げて立ち上がり、ティッシュをゴミ箱に捨ててから教室を出ていってしまった。
「…イッチー…なんで…」
***