第16章 猫王子と怪我人
『はぁぁぁぁ!?ちょ、起きてたわけ!?』
「目が覚めてね。…こっちにおいで」
『は!?』
「大丈夫、襲わないから。ほら、早く」
おずおずと赤司が眠っているベッドへ向かう。途中で足が痛んだけど、ベッドに体重を預ける事でどうにか少しの痛みで済んだ。
ベッドの中は赤司の体温で温かかった。
赤司に背を向けてベッドに入ると、後ろからギュっと抱きしめられた。ちょ、え!?
『赤司!?ちょ…』
「何もしないよ。ただ…はもっと温もりを感じるべきだと思ってね」
『…あたし、冷え症じゃないんだけど』
「そういう意味ではない。お前は何もかも1人で背負いすぎだ。…眠れないのか」
赤司の力がほんの少し強くなった。赤司は本当に不思議。ほら、こうやって赤司に触れていたら、さっきの不安も少しずつ消えていく。
『不安、だった。けど、もう大丈夫』
「だから…」
『本当に大丈夫だから。大丈夫だから、もう少しこのままがいい』
「っ…そういう言葉が僕の心を掻き乱すんだよ」
『んー?何?』
「何でもない」
赤司の言葉は真後ろにいても聞き取れないくらい小さかった。まるで自分だけに聞こえるように呟かれた言葉。だからあたしも深くは追及しなかった。
『赤司』
「…なんだ」
『あたしはあたしらしく頑張ってみる。仲間を信じて、あたしはあたしに出来る事を精一杯やってみる』
「それでこそだ。ただし、辛くなったら必ず僕の所に来い。いくらでも傍にいてやる」
『うん。ありがとう、赤司』
そして自然と瞼が落ちてきた。眠い。だけどもう一度ありがとうと呟く。ちゃんと伝わったかな。