第16章 猫王子と怪我人
「おやすみ、」
『うん、おやすみ』
最後の挨拶をかわしてからもう3時間は経った。だけど、どうしても眠れない。目が冴えて仕方がない。
いや、目が冴えるんじゃなくて、怖くて瞼を閉じる事が出来ないだけ。真っ暗な中、悲しそうに笑う監督の姿がどうしても消えないから。
『…赤司、寝た?』
「…スー…」
赤司の規則正しい寝息が聞こえてくる。そりゃそうか、もう3時だし、赤司も練習で疲れてるし。
『赤司…いつもはこんな事言えないけどさ…いつもいつもあたしの傍にいてくれて、ありがとう。赤司がいてくれて、赤司があたしの事を信じてくれて、あたしはいっぱい勇気を貰った。元気をもらった』
『赤司がいてくれたから今のあたしがあるし、本当は辛くて仕方ない今でも、こうやって落ち着けてる。バカみたいに笑っていられる』
『ありがとう、赤司』
「…どういたしまして」
『…は?』