第15章 猫王子と修学旅行
赤司side
風呂から上がり部屋に入った時から、他の男子達は恋愛の話をし出した。興味がなかった僕は、部屋から出て静かなロビーで読書を始めた。
それから一体どれだけの時間が経っただろう。ふと隣に人の気配を感じて視線をやった。
『あ、やっと気付いた』
「…」
『どんだけ本の世界に入り込んでるんだよ。気付かれないほど影が薄いって事かと思って泣きたくなったわ』
「テツヤはずっとそういう人生を歩んでいるよ」
『マジでか!!!そう言えば確かに黒子は影薄かった…今度メールで謝っておこう』
「で、どうしたんだ」
『いや、部屋に行ったけど王子いなかったから』
「…僕の部屋に?」
『皆で枕投げやろうと思って』
…はぁ。別に期待はしてなかったけど。いや、やはり期待はしていた。僕に会いに来てくれたんじゃないかって。
「なぜここに来たんだ」
『何故って、王子を呼びに来たんだよ』
「僕はいい」
『はいはい。行くよー』
「オイ、人の話w」
『友達作るチャンスチャンス♪』
「…」
『あたしに任せといて!』
返事もしていないのに、は僕の背中をぐいぐいと押してきた。の弱い力なんて僕が踏みとどまれば歩かなくても済むが、そうしない僕がいる。
きっと、心のどこかでに期待している自分がいる。弱くなったみたいで、そんな自分が嫌になった。だけどに押されている背中は、やっぱり熱くなっていた。