第2章 bad end *the opening
足が止まる。
止めてはいけないのに、止まってしまう。
「ダメじゃん、逃げるなんてさ」
真後ろに彼がいる。
なのに私の目は自分の腹部に釘付けだった。
熱い。
じわじわと広がっていく赤が何処かの人のもののように見えた。
「ね、僕を見てよ。凛ちゃん」
「っうあぁぁ…!」
ぐっと刃を押し込まれれば血に濡れた刃物がより多く姿を見せた。
「ぐ…ごほっ!げほ…」
熱い。痛い。苦しい。
口からも血が出てきた。
内臓も損傷しているのか。
「ねえ、愛し合おう?」
ああ、狂ってしまったのか。
「…じゅ、しまっ…くん……」
無意識に溢れた愛しい人の名。
それは彼をより狂わすには十分だった。