第5章 こんな雨の日には<明智光秀>
こんな雨の日には
貴方をからかいたくなる
「今日は雨だな、桜」
「…そうですね」
「外に行くのも億劫になるな、桜」
「…そうですね」
「くく、なぜそんなに警戒しているんだ」
「光秀さんがいつも私をからかうからです」
「まぁ、そう言うな。雨で退屈していたところだ。茶に付き合え」
「いいですよ、いじめないでくださいよ?」
「お前をいじめたつもりはないが」
こんな雨の日には
貴方の笑顔が見たくなる
「わぁ、可愛いお菓子ですね」
「お前に食べさせてやろうと思ってな」
「変な物入ってないでしょうね」
「俺が思う変な物は入っていないと思うぞ」
「……あ、美味しい」
こんな雨の日には
心がざわついて仕方ない
「どうしたんですか、光秀さん」
「何がだ」
「いつも、隙あらば意地悪してくるのに、今日は大人しいので」
「俺だってたまには大人しいこともある」
「本当かなぁ」
こんな雨の日には
「桜」
「はい?」
「好きだ」
想いを伝えたくなる
終