第3章 名前を呼んで(沖田END)
「近藤さんと土方さんは、今夜から何日か会合が続くんじゃありませんでしたか?」
沖田が思いついたように言って、二人を見た。沖田の言わんとしている事が分かる二人は、悔しくもただ頷くしかない。
「山崎は…まあ、どうでもいいか」
「…え」
隣で異議を唱えるような声を上げる山崎を華麗に無視して、
「夕方、迎えに行きます。…いいですか?さん」
「はい、分かりました。準備って、何かありますか?」
「いえ、特には。…あぁ、でも一応、好きな男との逢引に見えるような恰好でお願いしますね。まあ、いつもさんは、可愛いですけど」
「は、はぁ…」
からかうようにいう沖田の言葉を最後に、は一旦四季へと戻った。
夕方。少しだけ早めに店を閉めて、ユキが持たせてくれた着物の中で、余所行き用にしている物に袖を通す。
薄く紅を引いてみたりもしていると、本当に逢引前のようで、そわそわした気持ちになってくる。
支度が済んで、店の椅子に腰かけた所で、ガラリと入口が開いて、沖田が顔を覗かせた。
「お待たせしました、さん」
「はい」
沖田の傍へと小走りに駆けよれば、じっとのことを見つめてくる。
「な、何でしょう」
「いえ…可愛いなと思って。よく似合いますよ、その着物」
「あ…りがとうございます」
笑みを浮かべて、さらりと口にするほめ言葉が本気なのかは分からないけれど、褒めてもらったことは素直に嬉しくて、小さく礼を言う。
そんなの手を取ると、
「今日は、恋人同士ですからね」
そう言ってまた、笑った。