第6章 対価
そんな人でも、千秋の事は掴めずにいるらしい。
一族の癌である千秋の事を真っ先に消そうと、本家は動いていたらしいが、未だ生きているって事はそうなのだろう。
……あるいは、
別の恐ろしい考えが思い浮かぶが、想像すらしたくなくて考えを止める。
「……まぁ、考えても仕方ないか……浬の安全が最優先で行くが、アイツを捕まえない事には何も終わらない。引き続き、最新の注意を払って追ってくれ。」
「畏まりました。……では、お仕事も切りのいい所ですし、お夕飯になさいますか?」
先程までの緊迫した雰囲気が嘘のように和らぎ、一美さんはふわりと微笑む。
「ん、…そうだな……けど浬寝ちゃったからなぁ…」
時計を見て、いつの間にか5時を回っている事に気付き、その後浬の事を思い出して毛布を捲る。
「ん……んぅ………」
明るさに若干眉を寄せたあと、眠たいのか何度か瞬きをしながら目を覚ました。
「あ、おはよ…浬。……ご飯だけど、食べれる?」
目元に涙が溜まっており、それを指で救い取りながら顔色を伺う。
そこまで悪くなくて、調子は良さそうだ。