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第28章 少女のいる世界


「…と、まあ今ここにいる子達とうちの組織についてはこんなところかな…誰か、今興味がある人はいる?」

『……この外套は、誰の?』

「「「…!!!」」」

「あー…その外套の持ち主は、今寝込んじゃっててね。君のナイト君のものだよ」

『持ってても、怒られない…?』

「!うん、怒られない。寧ろ喜んでもらえるよ、蝶ちゃんが相手なら」

『蝶??』

少女は、そこで初めて自身の名前を知る。

『白石、蝶……白石…?……本当に、白石?』

「え?うん、そうだけど…」

『…ちよ、は何となくだけど……白石、は、なんか違う』

「?……!ああ、成程。ごめんね、こっちは旧姓だ…“中原”蝶ちゃん!」

『…なか、はら』

大切にするように、何度かそう繰り返していたらしい。
中原蝶、と、何回も。

____それから少女は何故だか目から涙を溢れさせ、暫く泣き止まなかったそうだ。

「それからは、やっぱりっていうかなんというか…立原君と一緒にいたがってね。ご飯と水分とを摂ってもらって、そのままそこで寝かしつけたそうだよ……中也君の執務室で」

「…そう、ですか。…帰巣本能ってやつですかね」

「そうだね。でも彼女になら、蝶道とでも例えた方がピッタリじゃあないかい?」

「首領も結構ロマンチックなこと仰いますよね」

「君ほどじゃあないよ。…会いたいかい」

そんなこと、聞かれなくとも答えはとっくに決まっている。

「……蝶に望んでもらえるなら、俺はどんなあいつとでも共にいたいと思いますよ」

「言うと思った。じゃあ、とりあえず君も精密検査に行っておいで、同じ病院を手配しておいたから」

はい、これ地図ね。
なんて手渡された地図…だが、そこは見覚えのない道が張り巡らされている場所で。

「?…首領、これいったいどこの地図…を、……!!」

しかし、見つけた。
見つけてしまった。

地図に少し太めの文字で書かれた、“空座町”という文字が。
そして、赤いペンでマークされた黒崎医院という病院。

「浦原さんっていう特別医が診察してくださるそうだ…携帯で連絡してくれれば、すぐに道作るって」

「…成程、……よくやるぜあの人」

「君もだよ…じゃあ、僕から連絡入れておくから。……本当によく、頑張ったね」

「……ありがとう…ございます」

頭が上がらない。
ああ、あとはここにお前がいてくれたら…
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